ファンドマネージャーによくある質問

ファンドマネージャーはどういう人が向いているの?

様々なタイプのファンドマネージャーがおり、どういう人が向いているのか、一概には言えませんが、あくまで優秀なファンドマネージャーの共通点として、個人的に感じることを書いてみました。

 

 

市場に全てを捧げている

片手間で、一流になれる世界ではないです。プライベートと仕事を切り分けることもできる仕事ですが、一流の人達は昼夜を問わず、運用に集中しています。

 

ウォーレン・バフェットは、ベッドでもアニュアルレポートを読んでいました。

 

ジム・ロジャーズは、次のように述べています。

 

「私は、37歳でリタイアする前は、朝から晩までひたすら働いていました。移動のタクシーの中で資料を広げたりしていたものです。1日15時間働き、1分たりとも時間を無駄にできないくらい忙しかったのです」(「世界的な大富豪が人生で大切にしてきたこと60(ジム・ロジャーズ)」)

 

資金の委託者から見ると、サラリーマン的に仕事をしている人と、運用の仕事に情熱を持って取り組んでいる人では、少し会話をするだけですぐに見分けがつくそうです。

 

 

疑い深い

世間で持ち上げられている企業に対して穿った見方をする。

 

逆に、誰もが嫌っているが、それを疑ってみる。

 

その習慣が他の人に気づかないリスクを回避したり、気付かない投資チャンスを得ることにつながります。

 

健全な疑い深さというのは投資家にとって重要な素養です。

 

ウォーレン・バフェットは、その後継者のに求める素養として、2006年の書簡で次のように述べました。

 

「We therefore need someone genetically programmed to recognize and avoid serious risks, including those never before encountered」

 

「今まで遭遇したことのないようなリスクを含めて、深刻なリスクを認識し、回避する才能が生来備わっている人を必要としている」

 

人と同じ見方に流されていては、深刻なリスクを感じて回避することは、できません。

 

大きなスケールで、物事を考えられる

前項と逆説的ですが、「疑い深いだけ」では、失敗します。

 

疑い深いだけの人は、少し株価が上がると、また下がるに決まってると決めつけて、すぐに利益確定をしてしまいます。レンジ内で動いているときはいいですが、大きなトレンドが始まったときに、たちまち大火傷します。

 

パソコンの画面内のチャートで、(もうこんなに上がったから下がるのを待とう)と考えるのではなく、何か大きな変化が始まっており、その1合目に過ぎない可能性を考えないといけません。

 

ファンドマネージャーへの転職

 

ファンダメンタルズで見積もった企業価値が、現在の時価より遥かに高いのであれば、株価が上昇していても新高値についていくのが最も合理的な判断になります。下がるまで待っても、大抵は自分に都合のいい価格まで下げてくれません。

 

 

どんなに自信があっても、逆の立場で考える謙虚さがある

ある銘柄を買っている人がいれば、必ず売っている人がいます。

 

どんなに自信のある銘柄でも、謙虚に逆の意見に耳を傾けることで、見落としていたリスクに気付き、大火傷から救ってくれることがあります。

 

 

せっかち

優秀なファンドマネージャーは、何故かせっかちな人が多いです。

 

自分が苦労して得たアイデアも、のんびりしていると、あっという間に市場に織り込まれて無価値になることが身に染みているからだと思います。

 

尚、優秀な経営者もせっかちな人が多いように思います。高い目標を持っており、そのためにやるべきことが山ほどあると常に感じているからではないでしょうか(周りは大変ですが・・・)。

 

 

頭の切り替えが早い

今まで順調に上昇してきたのに、ある日大きく下がる局面が来ます。その時、今までのストーリーを捨てて切り替えられるかが重要です。

 

ファンドマネージャーは、信念を持つことが大事ですが、柔軟性も必要なのが難しいところです。

 

相場における唯一の真実は、誰も将来何が起こるか知らないことです。

 

「ファンド」を「マネージ」するということは、相場を当てることではなく、いくつかのシナリオを想定し、どの場合も合理的に動けるよう備えておくことです。

 

従って、良いファンドマネージャーは、他人から見ればコロコロと見方が変わっているように見えるときがあります。

 

しかし、それはそのファンドマネージャーの中では、シナリオ1の次にシナリオ2がスタートしており、筋が通っていることなのです。

 

不確実な金融市場を相手にしている以上、それは避けられないことです。

 

 

偏見を捨ててすぐに試してみる

好奇心が旺盛、と同じようなことです。

 

年齢を重ねると、誰もが新しいことに億劫になるものです。「50歳にもなってスマホゲームなんてやってられない」「電子書籍なんか俺は使わない」「ビットコインなんて怪しい」と決めつけないで、半信半疑でも実際にすぐ試してみることで、頭でイメージしているだけの人より、一歩も二歩も有利になります。

 

ある会社が面白そうと思ったら、すぐに電話して聞いてみる。アポをとって訪問する。流行りの店に実際に行ってみる。試しに買ってみる。ゲームをダウンロードしてやってみる。ビットコインを買ってみる。

 

そういう軽いフットワークの積み重ねが、銘柄選択の差や自信度合いにも繋がってきます。

 

 

大胆かつ慎重

相場で儲けるには、相場の下落局面で大胆に動き、上昇局面では慎重になることが重要です。

 

逆に、失敗するのは、上昇局面で大胆に買い増し下落局面で慎重になり過ぎるときです。

 

企業の分析においても、5年、10年の長期の業績予想を大胆にする一方で、翌四半期の利益・コストがどう出るかを神経質に検討して、売買タイミングを丁寧に見極めます。

 

長期投資であっても、それは変わりません。

 

 

 

失敗しがちな例

逆に、失敗しがちなファンドマネージャーの特徴を挙げます。
偉そうなことを言っていますが、自分への反省を含めています(笑)

 

 

売りが下手

優秀なファンドマネージャーと、そうでない人の差は、買いではなく売りに現れます。

 

買いの方は、アナリストも推奨し、大抵は皆が納得するようなストーリーがあります。

 

しかし、売るタイミングについては、大抵の場合、セルサイドアナリストがまだ強気で大丈夫と思っている局面で、バッサリと利益確定する必要があります。

 

皆で議論して売るのではなく、大抵はファンドマネージャーが一人で判断します。

 

また、利食いより難しいのは損切りです。

 

自分の過ちを認めることは、周囲からの信頼を損ねることに繋がりかねません。それでも、損切るべきときに速やかに損切ることができるのが、優秀なファンドマネージャーです。

 

一方、下手なファンドマネージャーは、自分がいくらで買ったかをいつまでも覚えていて、そこまで戻るまでは売らない等、非合理的な考え方をしがちです。

 

私達は株価の買値を知っていますが、株価は私達の買値など知りません。

 

 

良い「企業」と良い「株」の区別がついていない

ファンドマネージャーへの転職

 

運用の仕事は、良い企業を買うことではなく、良い株を買うことです。

 

え? と思われるかもしれませんが、日本を代表する「優良企業」でも、株式市場においては、単に金利や為替に連動するだけの「株」は多くあります。

 

「就職すれば親が喜びそうな企業」ばかり並んでいるポートフォリオからは、大したリターンは生まれません。

 

日経新聞が毎年正月に掲載する「経営者が選ぶ有望銘柄」からは、大きなリターンは得られません。

 

世の中の多くの人が単に説明しやすい「良い企業」を保有して、満足している人達が多いからこそ、良い「株」に集中することで、差別化できます。

 

 

この違いを明確に意識するだけで、ワンランクアップします。

 

 

では、「良い株」とは何か。これは一言では言い難いし、それこそがファンドマネージャーの存在価値です。

 

「自分が想定するその会社の企業価値」と、「現在の時価総額」に十分に大きな差があることが、大前提です。

 

その企業価値を考える上で、様々な要素を考慮します。「ビジネスモデルの頑強さ」、「競合の状況」、「トップラインの成長率」、「利益率の方向感」、「増益率の変化」、「フリーキャッシュフローの動向」、「保有資産の価値」、「足元の業績進捗」、「バリュエーションの推移」、「業界のトレンド」、「経営者の考え方」、「株価の動き方」、「時価総額の規模」、「セルサイドのレーティングの過熱感」、「カタリスト」などを総合的に勘案します。

 

 

過度なリスクとる

運用においては、一度「大負け」したら、取り返すことが困難になります。

 

「大負け」というのは、「過度なリスクを取る」ことから生じ得ます。

 

「過度なリスク」というのは、「少数の銘柄に大きく投資する」か、あるいは複数に分散しているように見えて同じテーマ、同じような動きの銘柄であることから生じます。

 

新聞も取り上げ、個人投資家も知っている有望なテーマに乗っかっている状態は、リスクが高い状況です。

 

そのようなポジションを意図的に行っており、いつでも変更できると思っていても、逆回転するタイミングの嗅覚がある人は、ごく稀です。

 

タイミングを誤れば、過去数カ月の勝ち分の大半を吹き飛ばす経験をすることになります。

 

わからないことはわからない、という謙虚さを持ち、投資テーマを分散しておけば、大負けを経験しなくてすみます。

 

 

調査の努力を理由に、買う

リサーチの量とパフォーマンスは必ずしも比例しません

 

膨大な手間をかけたリサーチや、何十ページのレポートは、ファンドを売り込む際のアピールポイントにはなりますが、実際の投資判断に必要な論点はそんなに多くありません。

 

リサーチに必要以上の時間をかけすぎると、「これだけ人と時間をかけて調べたから・・・」とリサーチの量を理由に、何となく安心して売買するリスクが生まれます。また、調べている最中に、株価が上がってしまう(逆にショートのアイデアの場合は下がってしまう)リスクも高まります。

 

 

・市場に織り込まれておらず、時間をかけてリサーチする対価が十分にあるか。

・最も調べるべきことは何か。

・調べて確信が持てることと、いくら調べても確信持てないことが整理できているか。

 

 

調べる初期段階で、これらを意識しておかないと、仕事をやった気分だけ高まり、リターンは低下します。

 

筋の良くないアイデアを、いくら深堀しても、時間の無駄です。

 

「やる必要のない仕事を、上手にやっても意味がありません (ウォーレン・バフェット)」

 

 

葛藤や不安を抱えながら生きるのが嫌な人

人間、誰しも、安心して生きたいものです。年を取るほど、そういう傾向は強まります。

 

ポートフォリオでも、持っていて安心できる銘柄を選ぶ方がその時は気が休まります。

 

しかし、良い投資というのは、常に葛藤と不安を伴います

 

 

投資で成功するには、一般的な見方と相容れないために居心地の悪さを感じるポジションを貫き通す必要がある”  「勝者のポートフォリオ運用」(デイビッド・スウェンセン)

 

 

例えば、「新聞で叩かれ、他の投資家が売り、セルサイドがレーティングを下げ、周囲も眉をひそめるような会社だが、悪材料が出ても反応しなくなり、会社としてはこれ以上悪くなりようがない。」

 

あるいは、「まだ上場した直後で、無名の、伸びない産業の、ぱっとしない社名の会社だが、経営者が大きなビジョンと熱意を持っており、ビジネスモデルが納得でき、確かに業績は伸びている。」

 

大きなリターンがあるのは、そういう銘柄の、そういうタイミングでの投資です。

 

そのような銘柄を買うにあたって、味方はいません。

 

自分の調べたことや、アイデアは、一生懸命説明しても、バイアスを持った他人には、半分も伝わりません。

 

数週間か数か月間、葛藤、不安、ストレスに悩まされます。早まったかな・・・と後悔することもあります。

 

ファンドマネージャーへの転職

 

しかし、そういう「心理的に抵抗のある投資」は大きなリターンを生むことが多いです。

 

従って、あまりに人生に安心を求める人は、この仕事は向いていません。

 

将来の不安によるストレスこそが、まさにリスクであり、リスクとリターンは表裏一体だからです。

 

ストレスを抱えて、髪は抜けて、視力は悪化し、睡眠は浅く、時々胃が痛むことは、ファンドマネージャーの「仕事」なのです。

 


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