証券アナリスト資格の価値

証券アナリスト資格は転職に有利か?大学生にメリットあるか?プロが語る価値、難易度、年収、実際の仕事。

証券アナリスト資格


私はバイサイドアナリスト、ファンドマネージャー経験があり、証券アナリスト(CMA)資格も保有しています。

 

 

証券アナリスト資格、証券アナリストの年収などについて、徹底解説します。

 

証券アナリスト(CMA)資格とは

証券アナリスト資格は、証券分析のプロフェッショナル資格です。公的資格ではなく、民間資格になります。

 

 

名刺などに記載する正式名称は、「日本証券アナリスト協会検定会員」でしたが、2019年4月から、「日本証券アナリスト協会認定アナリスト」と変更されることになりました。

 

 

CMAの正式な英文名称は、「Certified Member of the Securities Analysts Association of Japan」でしたが、「Certified Member Analyst of the Securities Analysts Association of Japan」に変更されます。(赤字が変更)

 

 

名刺の変更手続きが必要になりますね。

 

 

証券アナリスト資格に必要な実務経験は?

証券アナリスト(CMA)を名乗るには、二次試験に合格し、3年以上の実務経験を積んで(合格前も含む)、検定会員に入会する必要があります。

 

 

実務経験には、以下のように、金融機関におけるITシステム開発や、事業会社における財務・企画業務なども含まれます。

 

CMA

(画像引用:日本証券アナリスト協会)

 

 

証券アナリスト試験の受験資格

証券アナリスト試験は、証券アナリスト協会の通信講座を受講すれば、誰でも受験できます。

 

 

通信講座に提出義務はなく、一切教材を開かなくとも合格することは可能ですが、この通信講座は必須であり、受講しないと受験できません。

 

一次試験だけでも、大学生のうちに受かればメリットあり

証券アナリスト資格は、今や運用会社は勿論のこと、銀行、証券、保険など金融機関の本社部門では、若手に資格補助を与えて、半ば義務付けている会社が多いです。

 

 

参考までに、以下が、2018年の証券アナリスト二次試験合格者数上位10社です。

1  野村證券 58名

2  大和証券 54名

3  三菱UFJ信託銀行 45名

4  三菱UFJ銀行 42名

5  みずほ銀行 40名

6  三井住友銀行 36名

7  SMBC日興証券 35名

8  三井住友信託銀行 33名

9  みずほ証券 32名

10  日本生命保険 24名

(出所:日本証券アナリスト協会)

 

金融機関によっては、「証アナ祝賀会」と称して、二次試験に合格した若手達を上司が飲みに連れていくことがあります。同期の間で、「A君は受かったけど、B君は落ちたから呼ばれない」となると、ちょっとキツイです。

 

 

せっかく運用・財務関連の部署についたとしても、二次試験は年に1回しかないため、証アナ合格がいつまでも遅れていると、「あいつは、こういう仕事に向いてないのかもね」と評価されて、異動につながることもあり得ます。

 

 

もし、大学生で時間があるなら、一次試験の一科目でもいいいので取得しておけば、入社した後に楽です。

 

 

毎年、一次試験(全3科目)で約300名、二次試験で約20名大学生が合格しています。

 

CMA

(出所:日本証券アナリスト協会受験データより作成)

 

私も新卒学生の面接官をしたことがありますが、学生が証アナ一次3科目受かっていたら、「頑張ってるね。本気で運用やりたいんだね」と評価していました。

 

 

もし金融以外の一般の事業会社に就職した場合も、証券アナリスト資格保有者は重宝されるでしょう。

 

 

証券アナリストの勉強過程で学ぶ、「企業価値」、「資本コスト」、「フリーキャッシュフロー」、「ROE分解」などの基本知識が、上場企業のIR部門や経営企画部門、M&A戦略部門で求められるからです。

 

 

証券アナリストの年収

証券アナリストは専門職とはいえ、税理士や弁護士のように、個人で独立している訳ではありません。

 

 

例外として、自動車業界で長年トップアナリストだった中西孝樹氏が「株式会社ナカニシ自動車産業リサーチ」を設立して独立されたという例もありますが、基本的には、アナリストは金融機関の一社員です。

 

 

証券アナリストには、「バイサイドアナリスト」と「セルサイドアナリスト」があります。

 

 

バイサイドアナリストは、アセットマネジメント会社、銀行、保険会社などの機関投資家の社員です。

 

 

一方、セルサイドアナリストは、証券会社(又はグループ)の社員です。

 

 

従って、証券アナリストの年収は、

@セルサイドかバイサイドか
A日系か外資か
Bジュニアかシニアか
Cセルサイドの場合はランキング

によって異なります。

 

 

一般的には、「セルサイド」の方が「バイサイド」より年収が高く、「外資系」の方が「日系」より高いです。「シニア」の方が、ジュニアより高いのは当然です。

 

 

ランキング」とは、Institutional Investor(通称:アイアイ)や、日経ヴェリタスが主催し、年に1回、バイサイドがセルサイドに投票します。

 

 

特にII(アイアイ)の投票は時間がかかり面倒なのですが、投票シーズン(11月末〜12月初旬)になると、セルサイドの「投票よろしくお願いします!」が、選挙活動のように高まります。

 

 

余談ですが、一時期、藤原紀香の彼氏と騒がれたアナリストは、外資系のセルサイド・シニアアナリストでした。

 

 

同じ外資系でも、バイサイドの場合、「米国系」の方が、「欧州・アジア系」より年収が高い傾向があります。

 

 

また、トップティアの米系バイサイド(Capital、FMR、Wellingtonなど)では、そこらのセルサイドを逆転し、アナリストの年収は最低でも3000万円を超え、4000万、5000万になります。

 

 

国内の求人で、「セルサイドのジュニアアナリスト」の場合、ビズリーチでは、1000万円〜1500万円の年収の案件が多いです。

 

 

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(※2018年9月時点)

 

 

(参考:セルサイドとバイサイドの違い。年収、仕事の満足度について

 

 

証券アナリスト資格は、異動や転職に役立つ

証券アナリスト(CMA)の価値ですが、資産運用の関連部署においては、20代でほぼ全員が取ることになるので、特別な価値はありません。落ちたら、ただ恥ずかしいだけです。

 

 

一方、業界未経験の人が、運用などの業界へ転職したり、同じ金融機関で、営業などから運用・財務関連の仕事へ異動願いを出す際には、一定の価値があります。

 

 

例えば、国内最大のヘッドハンターのプラットフォームであるビズリーチで、「証券アナリスト」で検索すると、「証券アナリスト必須」「証券アナリスト資格優遇」といった求人が、300件以上出てきます。(2018年11月時点)

 

 

(※尚、ビズリーチで求人検索するには、「性別」「住所」「氏名」など13項目の入力を完結する必要があります。)

 

CMA

 

 

証券アナリスト資格を活かして、未経験から資産運用業界へ転職

バイサイドといわれる「投信・投資顧問業界」は、平均年収・満足度が高い業界と言われています。

 

 

dodaの業種別の平均年収ランキング(2018年)では、「投信/投資顧問」が、2017年に続いて全96業種で1位でした。

 

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(出所:doda https://doda.jp/guide/heikin/)

 

 

資産運用の仕事は、未経験者が転職するにはハードルが高いですが、たまに「未経験可」の求人もあります。その際に、証券アナリストの資格があれば、熱意が伝わり、少しでも優位に立てるでしょう。

 

 

(参考:「未経験OK」の資産運用(アセマネ)の求人がある転職サイトを紹介

 

 

私自身も、証券アナリスト試験一次合格を機に、リクルートエージェントを通じて、運用の仕事に転職しましたので、証券アナリストの資格取得は、転職に役立つと断言できます。

 

 

証券アナリスト資格を活かして、M&A仲介・アドバイザリー業界へ転職

また、証券アナリスト資格と相性が良いのが、「M&A仲介・アドバイザリー」です。

 

 

今の日本の上場企業で、平均年収の高い企業トップ10の常連は、何の産業かご存知ですか?

 

 

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(出所:President Online)

 

 

「M&A仲介」は、企業のM&Aの際に、売り手と買い手の間に立ち、両方から手数料を得ます。

 

 

「M&Aアドバイザリー」は、FA(Financial Advisor)とも呼ばれ、売り手か買い手、どちらか片方の顧問として利益最大化に努めます。

 

 

このうち、特に「M&Aアドバイザリー」の求人では、より財務知識が問われるため、以下のように、証券アナリスト資格を優遇していることが多いです。

 

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(出所:ビズリーチ

 

 

銀行員や、証券マン、保険会社の若手社員が証券アナリストを持っていれば、M&A仲介の業界も、「若くして稼げる転職先」として有望だと思います。

 

 

(参考:証券アナリスト資格優遇の求人。高収入な転職先を5つ紹介。会員を退会する前に知っておくべきこと

 

 

 

証券アナリスト資格は、実際の仕事でも役立つ

証券アナリストは、単に、転職、異動のアピール資格ではなく、仕事の実務でも役に立っています

 

 

例えば、証券アナリスト二次では、「コーポレート・ファイナンスと企業分析」の科目で、企業価値の分析方法を学べます。

 

 

バリュエーション手法として重要なDCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)モデルの式は、アナリストの試験勉強を通じて叩き込まれます。

 

 

この基本ができずに、HOLTなどのツールに依存して、個別銘柄のDCFモデルをゼロから手作業で作れないアナリストは、アナリストとして失格だと思います。

 

 

外資系アセットマネジメントの転職の面接では、その場で、ある会社の財務モデルを作成させられることもあります。

 

(参考:私が経験した外資系・ヘッジファンドの面接の特徴

 

 

また、昨今の投資の現場では、企業価値を向上させるために、投資家と企業との対話が重視されています。

 

 

運用会社のアナリストやファンドマネージャーが、企業の経営陣と、企業価値について議論する際に、そもそも企業価値の変数である、フリーキャッシュフロー資本コストの理解が無ければ、対話になりません。

 

 

これは、金融以外の会社に就職しても同じです。

 

 

どんな上場会社でも、IRの部署に配属されたり、将来出世して役員にでもなれば、コーポレートガバナンスの考え方や、企業価値やROICについて理解していないと、投資家とまともな議論ができません。

 

 

「経営陣が何もわかっていない会社に投資するのはリスクが高い」と機関投資家に判断され、株式を売却されかねません。

 

 

「財務分析」も役立つ

「財務分析」の科目も実務で役に立ちます。

 

 

例えば、連結財務諸表分析で、「PLの当期純利益」「BSの利益剰余金」「CF計算書の営業CF」がリンクし、PL・BS・CFが相互につながっていると理解することは、アナリストが財務モデルを作成するときの、基本中の基本です。

 

 

モデルを作っていて、「「資産」と「負債+資本」が合わない・・・」という問題が生じたときに、何がおかしいのか自分で一つ一つ辿っていく力も、財務分析の勉強を通じて強化されるでしょう。

 

 

証券アナリスト試験の「受講料」「受験料」「年会費」は?

資格取得の費用としては、3種類あります(全て税込。2018年11月時点)。

 

通信教育講座の受講費用

通信講座の受講は必須であり、費用は以下の通りです。

 

【一次試験受講費用】
一般受講者 55,500円
(勤め先が会員企業の場合は、49,400円)

 

【二次試験受講費用】
一律 52,500円

 

受験料

【一次試験】
・証券分析とポートフォリオ・マネジメント 6,200円
・財務分析 3,100円
・経済 3,100円

 

【二次試験】 8,200円

 

入会費と年会費

【検定会員入会費】 10,000円
【年会費】 18,000円

 

 

上の3つを合計すると、138,600円+年間維持費18,000円ということになります。

 

 

もし追加でTACの対策講座に申し込む場合、二次試験の通学コースで215,000円です。

 

 

たまに、「会社の義務なので、合格すれば意味ない」「年会費の無駄」と解約する人もいますが、CMAを名乗れないのは、少し勿体ないと思います。

 

 

証券アナリストの資格は、アナリストやファンドマネージャーを目指す場合は勿論のこと、それ以外の部門でも学べることが多く、将来のステップアップの武器となるため、それだけ払う価値は十分にある資格だと思います。

 

 

証券アナリスト試験の難易度

証券アナリスト試験の難易度ですが、大卒程度の学力があれば、「頑張れば、誰でも受かる」試験です。

 

 

私は、若い人を色々見てきましたが、努力して一定の勉強時間を確保すれば受かる試験です。受からない人は、単に勉強時間が足りていません。

 

 

証券アナリスト試験合格に必要な勉強時間

では、「どのくらい頑張ればいいか」というと、一般的には、一次試験・二次試験ともに、平均200時間の勉強時間が必要と言われています。

 

 

日本証券アナリスト協会のアンケート調査でも、「第1次レベル試験3科目合格までの平均勉強時間は200時間程度。また、300時間以上勉強したという人も12%」という結果が出ています。

 

 

200時間というのは、6月上旬の試験日に向けて、平日に1時間、土日に5時間ずつ(=週15時間)を、2月半ば頃から14週続けるイメージです。私自身の経験でも、これくらいだったと思います。ゴールデンウィークはあきらめ、追い込みになります。

 

 

一次試験は一科目ずつ受験できるので、時間がなければ、一つずつ攻めてもよいでしょう。ただ、運用会社の若手は、3科目まとめて受けるのが普通です。

 

 

証券アナリスト試験の日程、合格発表日は?

一次試験は、毎年4月下旬と、9月下旬(又は10月下旬)の2回実施され、合否結果は、それぞれ6月上旬、11月上旬までにマイページに掲載されます。

 

 

二次試験は、毎年6月上旬1回実施され、合否結果は8月中旬までにマイページに掲載されます。

 

 

証券アナリスト試験の合格率

過去5年間(2014年〜2018年)の一次試験の合格率は、48.2%〜53.0%、二次試験の合格率は47.5%〜49.5%と安定しています。

 

 

つまり、絶対水準ではなく、受験者の相対順位で合否が決まります。合格ラインの目安としては、一次試験で60%、二次試験で50%正解していれば、まず受かるといわれています。私自身の実感でもそう思います。

 

 

証券アナリスト試験に合格したら、次に目指すべき資格はCFA

証券アナリストに合格したら、次はCIIA(国際公認投資アナリスト)もいいですが、個人的には、CFA(通称「米国証券アナリスト」)にチャレンジすべきだと思います。

 

 

理由は、世界の金融業界において、圧倒的な知名度権威があるからです。

 

 

CFAは、「米国発祥の資格」であり、CIIAは「各国の資本市場の多様性を尊重」していますが、現実的には、CFAが世界の金融業界のグローバルスタンダードとなっています。

 

(参考:CFAの資格をとれば、未経験でも転職して年収上がる?年会費5万円の元はとれる?難易度は?

 

略称 CFA CIIA

正式名称

Chartered
Financial
Analyst
CFA協会認定証券アナリスト

Certified
International
Investment
Analyst
国際公認投資アナリスト

試験回数

Level1:年2回(6月、12月)
Level2:年1回(6月)

2018年から年1回(3月)に変更

試験時間

Level1〜3:各レベルともに午前・午後3時間(合計6時間)

Level3の午前中は筆記。他は選択式。

各単位3時間(合計6時間)の筆記。

試験言語

英語のみ

日本語、英語

受験資格

・大学卒又は4回生
・又は、4年以上の職務経験

・CMA(証券アナリスト協会検定会員)であること

受験費用

登録費:450ドル
試験代:650〜1380ドル(早期ほど安い)×3回

合計 約26万〜50万(1ドル110円)

一単位ずつ
:15,400円

二単位まとめて受験
:25,700円

年会費

475ドル
(日本CFA協会年会費含む)

なし
(CMAの年会費のみ)

年間受験者数

世界で約227,000人

世界で約1000人
(国内:約105人)

累計合格者数

世界で約155,000人
(国内:約1000人

世界で9135人
(国内:2774人)
(2018年3月)

 

CIIAは、英国(FCA)、香港(SFC)、台湾(SFI)の証券業務資格において、一部科目免除があることがメリットですが、英国や香港においても、金融機関の多くの若手が勉強しているのはCFAです。彼らと名刺交換するとCFAはよく見ますが、CIIAは日本人以外では、私は見たことがありません。

 

 

資格としては、CIIAも日本語でハイレベルの内容を安価で学べるので、取得して損はないと思います。

 

 

CFAも、米国は勿論、オーストラリア、カナダ、ギリシャ、香港、シンガポール、トルコ、ベトナムにおいて、各国の資格要件に準じると認められています。インドネシア、パキスタン、タイでは、司法に携わる人にCFA試験を義務付けています。

 

 

CFAは、よくMBAと比較される試験です。難易度とコストは高いですが、金融業界ではMBAよりコストパフォーマンスが高いです。世界における知名度は非常に高く、外資への転職でも有効です。

 

 

(参考:外資系金融に強いおすすめの転職エージェント3選。年収1800万円にアップした体験談。)

 

 



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